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通潤橋の放水とともに熊本山都観光が大号砲 -前編-

団体旅行コラム|2020年2月26日

2020年4月、4年ぶりに放水を再開する通潤橋

2020年4月、4年ぶりに放水を再開する通潤橋

熊本県山都町でもっとも知られる観光スポット、国指定重要文化財「通潤橋」が2020年4月、4年ぶりに放水を再開します。江戸期から続く八朔祭や清和文楽など連綿と続く文化遺産、自然とのふれあい施設などが豊富な山都町の魅力を、前編・後編の2回に渡ってお届けします。

※この記事は、トラベルニュース様にご提供いただきました。

梅田穰町長に聞く「山都町の魅力と今後の取り組み」

梅田穰町長

ーー山都町観光を代表する通潤橋の現状をお聞かせください。

2016年4月の熊本地震で被災し、漏水が生じるようになりました。17年4月から復旧工事に入り、18年中に完了する予定でしたが、同年5月の豪雨により石垣93個が崩落し、現在保存修理工事を進めているところです。工事は順調に進んでおり4月19日、4年ぶりに放水を再開します。

ーー通潤橋の放水があるかないかで、山都町の観光にどのような変化がありましたか。

通潤橋の放水は本来、橋に溜まった砂を放出することが目的でしたから、本来は年に1度の放水でした。それが10年ほど前から年に160回ほどの放水を行ってきましたから、通潤橋の放水なくして山都町の観光は考えられませんでしたし、実際に観光客数は激減しました。いかに通潤橋に頼っていたかを実感し、通潤橋以外の魅力ある素材の情報発信の必要性を感じました。地域住民も私と同じだったと思います。

町の素材を改めて見直しますと、江戸時代中期から約260年前に始まったと伝わる八朔祭や160年前の江戸時代末ごろから始まった清和文楽など、連綿と山都町で受け継がれてきた文化が残っており、これをもっと世に広めていきたいと思っています。

八朔祭の大造り物展示小屋 八朔祭は田の神様に感謝し豊年祈願と商売繁盛を願うもので竹や杉、シュロの皮など自生する植物を材料にして作る「大造り物」が見どころで、毎年9月の第1土曜日・日曜日に開催されます。「大造り物」は町の連合組が作り競い合うわけですが、昨年金賞を取った阿波踊りを踊る「消費税増税あわふく国民」はホウヅキの赤が色鮮やかでした。

祭以降も展示場を設け、色が褪せて風合いが出た「大造り物」を見ることができます。「大造り物」を見ながら町を散策してもらえるような取り組みができないかと展示場の整備を進めているところです。

清和文楽の語りと三味線は清和文楽館の職員が担当しますが、あとは地元の人が保存会を結成し、継承しています。1979年に清和文楽人形芝居が熊本県の重要無形文化財に指定、「文楽の里」づくりが進められていく中で、92年に九州唯一の文楽の専用劇場として「清和文楽館」を完成しました。年に数回しか見ることのできなかった公演が200回近く行われ、年間20万人以上の観光客が訪れるようになっています。

このほかにも山都町には五老ヶ滝や鵜の子滝、聖滝など多くの滝があるので滝めぐりも可能ですし、毎年1月末に行われる神楽祭りも見ものです。こういった素材は海外からのお客様に魅力的なものばかりだと自負しています。

キャンプ場も西日本最大級の服掛松キャンプ場をはじめ町内に5カ所あることも山都町の自慢の1つです。

ーーアクセスに関してはいかがでしょうか。

2018年度に九州中央自動車道延岡線の嘉島−山都中島西インター間が開通しました。これで福岡・大宰府インターから山都町まで約70分で来ることができるようになりました。あと3年以内に矢部インター(仮称)まで開通する予定ですが、開通すれば山都町中心部まですぐに入って来ることができるようになります。

開通を見据えたグランドデザインの中では体育館やグランドゴルフ場を含む町営グラウンド周辺整備や道の駅の整備をスピード感を持って取り組んでいきます。

山都観光のシンボルが復活 自然災害乗り越え

復旧作業が急ピッチで進む通潤橋

山都町観光のシンボルである石橋「通潤橋」といえば、橋から繰り出される「放水」。熊本地震に端を発した損傷で2016年4月から休止していたが、4月19日に4年ぶりに再開される。豪快な水のアーチを描く放水が“インスタ映え”全盛時代にようやく登場。この復活は、山都にとっても熊本県観光にとっても今春の大きなトピックになる。

通潤橋は、日本最大級の石造りの水路橋で国の重要文化財に指定。古くから石橋が点在する上益城・緑川流域エリアを代表する存在だ。1854年、水不足に悩む白糸台地に水を供給しようと、惣庄屋の布田保之助が尽力、肥後の石工たちの匠の技を駆使して、わずか1年半の工事で作り上げた人知の結晶。地域の田畑に潤いをもたらした。

長さは76メートル、高さは20・2メートル。実際に見てみれば、そのスケールの大きさとアーチの美しさに驚く。橋の上部には通水管が通され、今も水を供給している。全国の石造りのアーチ橋のなかで唯一放水が可能という大きな特徴も観光客をひきつけてきた。放水は本来、通水管に詰まった堆積物を取り除くために行われていたものが、その豪快さと美しさに観光素材として定着した。

しかし熊本地震で石管周りが損傷。復旧工事中には大雨の影響で石垣が崩れるなど苦難が続き、復旧まで4年を要した。放水も休止。ただ、被害を受けて橋の内部構造が明らかになるなど新たな発見もあったという。

放水という通潤橋の“売り”のひとつの復活に、観光の起爆剤にと地元の期待も大きい。再開後の観光用の放水は土日祝日を中心に従来通り1日1回で、13時からの15分間。9月第1土日曜の「八朔祭」期間は特別時間で行う。5月7日−7月20日は農繁期のため、12−3月は凍結防止のため休止するが、ゴールデンウイークや夏休みは多くの観光客の目を楽しませることになる。

 通潤橋放水カレンダー クリックすると拡大します   

通潤橋への思いに触れる

通潤橋を訪れたら、奥深さにさらに迫りたい。橋の目の前にある道の駅通潤橋に併設する「通潤橋史料館」に行けば、趣向を凝らした展示資料で学びが深められる。

通潤橋の仕組みを可動模型を使って解説。実物の石管や木管を展示しているほか、200インチの大画面で放水の迫力を体験することができる。通潤橋を建設した布田保之助の思いや石工たちが取り組んだ工程などを映像やジオラマなどで紹介するほか、地域の石橋文化についても伝える。

通潤橋史料館(2020年4月再開予定)
【TEL】0967-72-3360(10時~16時)
【住所】熊本県上益城郡山都町下市182-2
【入館料】大人300円、小中学生150円
※団体(20名以上)大人200円、小中学生100円
※団体の場合は、事前予約をお勧めします。
【駐車場】あり(道の駅通潤橋内 136台)

円形の筒から溢れた水を2地区へ農業用水として分けて送る 少し離れた小笹地区にある「円形分水」は、円形の筒から溢れた水を2つの地区へ農業用水として分けて送る分水施設。7対3に水を分け、7割は通潤橋に送られている。1956年に設計され、完成以前は干ばつのたびに起こっていた水を求めた紛争が解消されたという。

毎年9月第1土日に開催 一年通して町内に展示も

八朔祭の「大造り物」

古くから豊かな自然のなかで農村文化を紡いできた山都町にとって、祭事は町民の矜持ともいえる存在だ。四季折々、その風土を伝える祭りが行われるが、一番の盛り上がりをみせるのが秋の「八朔(はっさく)祭」。江戸時代中期、宝暦年間に始まり、約260年にわたり連綿と受け継がれてきた豊作祈願と商売繁盛を願う祭りだ。町民の心意気を感じる秋の風物詩を見物しようと、例年町外からも多くの人が訪れる。

八朔祭は旧暦の8月1日、暦では「八朔」の日に行われ、現在では毎年9月の第1土日曜に開かれる。田の神様に感謝する祭事で、商家が農民を労い、もてなしたことが起源と伝わる。

竹や杉、すすきなど自然素材で造られた「大造り物」 祭の特徴かつ目玉は「大造り物(おおつくりもの)」。竹や杉、すすきなど自然素材を使った高さ3−5メートルもの巨大な造形物で、龍や麒麟といった伝説の生物から時代を表す風刺まで、毎年商店街の各連合組が腕を競い合うように作り上げる。ダイナミックながら自然への感謝を織り込んだ大造り物。舞台となる町内中心部の浜町商店街一帯を八朔囃子の音に乗って何基もが練り歩く様子は圧巻だ。

例年、パレードや踊り、太鼓の披露、ミニライブ、花火大会もあり、賑わう。日曜は町営中央グラウンドなど周辺に設けた駐車場と商店街を結ぶシャトルバスも運行される。

大造り物は、祭り期間以外にも見ることができる。「やまと文化の森」をはじめ同商店街一帯に設置されており、まち歩きがてら見て回れば、一年を通して山都の風土に触れることができる。自然素材でできているだけに、季節によって色合いが異なり、違う表情を見せることも魅力だ。

「清和文楽」一年通し公演 九州唯一の人形浄瑠璃専用劇場/山都

清和文楽

山都町の歴史風土を色濃く感じさせる「清和文楽」。農業の合間の娯楽、奉納行事として、江戸時代末期から今日まで連綿と受け継がれてきた。九州唯一の人形浄瑠璃専用劇場「清和文楽館」も持つ。

清和文楽の歴史は約160年前に遡る。この地を訪れた淡路の人形座から村人が人形を譲り受け扱いを習得したことが起源とされる。同町清和地区では「文楽の里」づくりが進められ、1992年に同館が誕生。年間200回弱の公演が行われ、一年を通して文楽が楽しめる。小中学生らの社会見学やインバウンドの利用も多い。

清和文楽館
【TEL】0967-82-3001(9時~16時半)
【住所】熊本県上益城郡山都町大平152
【入館料】清和文楽公演鑑賞料(展示・見学料含)・・・
高校生以上 1,700円/中学生 1,000円/小学生 800円 ※大人50名様以上1割引
清和文楽ミニ公演鑑賞料(展示・見学料含)・・・
高校生以上 1,600円/中学生 900円/小学生 700円 ※大人20名様以上1割引
展示・見学料・・・
高校生以上 510円/小中学生 260円
【駐車場】あり(普通車61台、大型車4台、身障者用3台、ほか第2駐車場あり)
舞台を構成する語り手の「太夫」、物語に情緒を生む「三味線」、そして「人形遣い」。地元出身の後継者がルーツの兵庫県・淡路人形座で修業を積んだ。物語は世話物や時代物の定番から、オリジナルの「雪おんな」まで幅広く上演。人形浄瑠璃ならではの悲哀や情緒を迫力をもって演じる。

明智光秀が主人公の「絵本太功記」の一場面 本公演は7−11月の毎週日曜と12−6月の第2・4日曜。それ以外の日も予約公演に応じ、団体や出張公演にも対応する。公演がない日は併設の「清和文楽資料館」で魅力に触れられる。展示見学は大人510円、本公演鑑賞料は大人1700円。特産品が並ぶ「清和物産館」も併設。

今年は大河ドラマ「麒麟がくる」放送にあわせ、3月まで明智光秀が主人公の「絵本太功記」を公演している。

山都町「橋ものがたり」 石橋から新進気鋭の橋まで

二層式の斬新なデザインの「馬見原橋」

熊本県上益城地域には通潤橋をはじめ多数の石橋が架かる“石橋文化”が根付く。急峻な渓谷が多く、人馬の往来は危険を伴う難儀だった。そのため、この地域には江戸期に多く石橋が設けられ今も独特の景観をつくっているが、そのなかにあって山都町には近年、新進気鋭の橋が登場。古きよきものを守りながらも未来へと山都の“橋ものがたり”を紡いでいる。

肥後と日向を結ぶ古道「日向往還」の宿場町、馬見原地区はその面影を漂わせる歴史情緒豊かな町並みが広がる。馬見原商店街を散策していると、ひと際目を引く橋が見えてくる。「馬見原橋」だ。

五ヶ瀬川に架かる橋で、1995年に竣工。上は車道、下は歩道という二層式の斬新なデザインを採り入れている。歩道部分には2カ所大きな穴が開いており、川を橋上から眺められる仕組みを導入。清流を泳ぐ魚も見られるといい、散策にアクセントを加えてくれる。

横浜ベイブリッジと同じ大野美代子さんが設計した「鮎の瀬大橋」 緑川渓谷に行けば「鮎の瀬大橋」が架かる。長さ390メートル、高さ約140メートル、主塔の高さ70メートルという大きな橋で、横浜ベイブリッジを設計した大野美代子さんが設計、99年に竣工した。デザイン性を重視しメタリックオレンジのケーブルがモダンさを見る人に強く訴えかける。そのさまはまさに“バレイブリッジ”。土木学会デザイン賞最優秀賞も受賞している。橋のたもとからは谷の絶景を一望。紅葉の時にはその風景は一層映える。

石橋と水の文化 豊かな歴史風土

"石橋の里"として知られる自然豊かなまち、山都町。
自然災害を乗り越え、4月から放水を再開する「通潤橋」が、より多くの観光客を魅了することでしょう。

山都町の魅力は、美しい景観だけではなく、綿綿と伝わる文化の中にもありました。

江戸時代から受け継がれる清和文楽は、一時途切れつつも幾多の時代を乗り越え、現代まで残っています。演じているのが現役農家の方というお話を聞き驚きました。

豊作祈願と商売繁盛を願う八朔祭も、熊本県を代表する伝統文化のひとつです。「大造り物」は各連合組合が趣向を凝らし、すべて自然に自生しているものを材料に毎年つくっており、何基もの大造り物が引き回される姿は、圧巻だろうなと感じました。大造り物は祭りが終わっても見ることができて、近くで見るととても繊細で臨場感あふれる迫力があり、250年以上の歴史と熟練された技術が際立つものでした。

次回コラムでは、今回お伝えしきれなかったおすすめスポットや旬の味覚など、まだまだ尽きない山都町の魅力をたっぷりお届けします!